かんだすなおと私

かんだすなお

令和3年度定例会2月議会一般質問

自由民主党の「かんだすなお」でございます。

本2月議会においては、大綱2点について質問を致します。

区長・教育長におかれましては、明確なご答弁をお願い申し上げます。

 

それでは、通告通り質問に入ります。

まず、第1番目の質問は、治安・防犯問題に焦点を当てた孤独・孤立対策についてです。

今年1月15日の大学入学共通テスト初日に、受験会場である東京大学農学部前で、受験生を含む3人が刃物で刺される事件が起きました。

被疑者は東海地方在住の私立高校2年の男子生徒であり、「勉強が上手くいかず、事件を起こして死のうと思った」と供述しているようです。

通学している高校は、事件は「(コロナ禍の影響等で)孤立感にさいなまれて自分しか見えていない状況の中で引き起こされた」と推測しています。

また、昨年12月17日には、大阪市心療内科診療所が通院中の患者に放火され、医師を含む25人が犠牲になりました。

被疑者も死亡しており、全容の解明は不可能ですが、大阪府警は「社会との接点を見いだせず、社会から孤立していた可能性がある」とみているようです。

両事件ともに、孤独・孤立を抱えた人物が希死念慮を抱いて自暴自棄になり、見ず知らずの他人を道連れに無理心中を図った「拡大自殺」の一環として起こされたものと言えるでしょう。

このような無差別大量殺傷事件は、21世紀に入ってから顕著になって来ました。

大きな事件では、2001年(平成13年)大阪教育大学附属池田小学校事件、2008年(平成20年)秋葉原事件、2019年(令和元年)京都アニメーション事件、2021年(令和3年)小田急線・京王線事件などが思い起こされます。

現代社会は、無差別襲撃の危険性と隣り合わせにあり、治安が脅かされていることを常に意識せざるを得ません。

その背景にあるのは、孤独・孤立から来る自分が置かれている境遇への不満ではないでしょうか。

自分の人生が上手くいかないのは「他人が悪い」「社会が悪い」という自己中心的な考え方から、他責的傾向を強めて無差別襲撃に至っているのではないかと考えています。

かつては、犯罪に走る要因として、貧困や人間関係のもつれが多く見られたように思います。

しかし、昨今は犯罪の背景に孤独・孤立が結び付く事件が多くなっている気がしています。

一方、孤独・孤立がきっかけとなる犯罪は、凶悪犯罪だけではありません。

例えば、その一例が万引き(窃盗)です。

2017年(平成29年)東京都が公表した有識者研究会の調査報告書によると、65歳以上の高齢者が万引き容疑で検挙された事件をみると、「独居」が56.4%、交友関係を持つ人が「いない」と回答した人が46.5%となっています。

同調査報告書は、「自らをサポートしてくれる人が身近にいないことも考えられ、社会関係性の欠如が孤独や不満、ストレスなどにつながり、問題行動へと発展するケースもあるのでは」と分析しています。

孤独・孤立を防ぐ対策は、治安・防犯の対策と表裏一体のものと考えられるのではないでしょうか。

ところで、孤独・孤立の問題は、日本だけの問題ではありません。

その対策について、今や国内外で官民を超えた動きが広まって来ています。

先駆けとなったのは英国で、2018年(平成30年)1月にトレーシー・クラウチ庶民院議員が「孤独問題担当国務大臣」に任命されました。

日本は3年遅れて、2021年(令和3年)2月に坂本哲志衆議院議員が「孤独・孤立対策担当大臣」に任命されています。

まだ国を挙げての取り組みは始まったばかりであり、その真価が発揮出来るまで時間が掛かることでしょう。

 

そこで、質問致します。

1.国民性か否かは判然としませんが、日本人が長期間に亘り孤独を感じやすいという調査結果が出ています。

米国カイザー・ファミリー財団等の2018年(平成30年)の調査によると、孤独を感じている期間が10年を超える割合が米国・英国では各々22%・20%であるのに対し、日本では35%と実に三人に一人以上が10年以上孤独を感じているという驚くべき調査結果が公表されています。

日本では、久しく少子高齢化が叫ばれる一方、生涯未婚率も上昇傾向にあり、誰もがいつでも孤独・孤立の状況に陥る可能性があると言えます。

安心・安全な街づくりのためには、他者との繋がりがより重要性を増していると思います。

周囲に悩みを打ち明けやすい環境を整備することが必要ではないでしょうか。

昨今墨田区で新築されている集合住宅は所謂「ワンルームマンション」が多いことは、肌実感として感じています。

墨田区で世帯の単身化が進行している現状を踏まえ、何らかの社会的安全網(セーフティーネット)構築に関する施策が更に重要になって来ていると思います。

それらが墨田区の治安・防犯に繋がり、安心・安全な街づくりに寄与するのではないでしょうか。

墨田区は、様々な社会的弱者が暮らしやすい環境を整えるべく居場所づくりの施策を推進しています。

しかし、残念ながら完全には手が行き届いていない方々もいらっしゃるのではないかと思います。

そこで、更なる施策の強化や新しい施策も望まれるところです。

区長の今後の方針と意気込みについて伺います。

 

2.孤独・孤立の芽を早いうちに摘んでしまうためには、教育現場での児童・生徒への指導・見守りが重要であると考えます。

また、これらは将来の引きこもりを未然に防ぐことにも繋がるとも言えるでしょう。

ところで、学業の面で、墨田区の児童・生徒の学力が伸長していることは、大変素晴らしいことです。

しかし、その一方、学校に求められていることは知育のみならず、徳育・体育も含まれています。

児童・生徒が学校生活や地域生活において良好な人間関係を築き、孤独・孤立とは無縁の大人になるための徳育教育がこれから更に重要になって来ると思われます。

そこで、児童・生徒が健全な人間関係を築くことが出来るような教育を行うよう、今後教育委員会として学校現場に対しどのような働き掛けをされますか。

教育長のご所見を伺います。

 

次に、第2番目の質問は、小・中学校の英語教育における日本人の名前の表記方法についてです。

本来、氏と姓は違うものですが、今では両者を区別せずに使われている現状があり、ここでも特に区別しないこととします。

さて、世界の国や地域には、様々な名前の表記方法があります。

例えば、日本を含む東アジアの国々では、氏名の順に名前を表記します。

逆に、欧州の多くの国々では、名氏の順に名前を表記します。

更に、氏がなく名だけの国もあります。

ミャンマーアウンサンスーチー女史は名のみの名前で、氏はありません。

ビルマ民族は、性別に関わらず、氏を持たないのです。

その他にも、世界には様々な名前の表記方法があります。

これらは、何が良くて何が悪いというような次元の話ではなく、単なる習慣の問題で、名前に関する文化に違いがあるというだけのことです。

それぞれの名前の表記方法は互いに尊重し合うべき文化であり、それこそが多文化共生という考え方の一環だと思います。

和歌山大学教育学部の江利川春雄教授の研究によると、幕末の開国当初は日本人の名前表記はローマ字でも氏名の順が主流だったそうです。

しかし、明治維新以降、英語を始めとする西洋の言語の中で日本人の名前を表記する際に、名氏の順に表記を変更する習慣が出来上がりました。

その理由として、治外法権の承認・関税自主権の喪失という不平等条約を改正するため、西洋と対等の近代国家設立の早期実現を目指した、欧化政策一辺倒の明治新政府によって無批判に導入されたものが、日本国内で広く習慣化していったのだと考えられます。

このような習慣を持つ国は、世界でも稀だと思います。

日本人の人名は、どんな言語の中であれ氏名の順で表記することが本来の姿であります。

他の東アジアの国々をみても、例えば習近平国家主席は、英語の中でも必ず「Xí Jìnpíng」と表記され、決して「Jìnpíng Xí」とは表記されません。

同様に、岸田文夫首相は、英語の中でも「Kishida Fumio」と表記されなければなりません。

しかし、実際は、外国の多くの報道機関が「Fumio Kishida」として記事にしています。

これは、決して日本に対し嫌がらせをしているということではなく、寧ろ日本の習慣を慮って尊重してくれているのだと思います。

日本人の名前のローマ字表記については、2000年(平成12年)12月文化庁第22期国語審議会が「姓名のローマ字表記の問題」の中で、姓名順が望ましいと答申しています。

また、2019年(令和元年)5月、当時の河野太郎外務大臣が同様の発言をされたことは記憶に新しいところです。

 

そこで、質問致します。

1.墨田区が採択している英語の教科書は、日本人の名前表記を正しく氏名の順にしています。

これは当然のことですが、教科書には日本人の名前は名氏の表記順もあるという趣旨の注記もなされていました。

更に、実社会に目を向けますと、まだまだ名氏の順で日本人の名前をローマ字表記する習慣が残っています。

このような現状は、児童・生徒の立場に立てば、頭が混乱してしまうのではないかと危惧しています。

小・中学校における英語教育において、どんな場合でも日本人の名前は氏名の順で表記することが望ましいこととその文化的意義をしっかりと教えることによって、自国の文化を大切に思い、ひいては他国の文化をも尊重する、多文化共生の理念を児童・生徒に身に着けさせることが出来るのではないかと考えます。

地球規模化(グローバル化)が今後益々進むことが想定され、今まで区民にはいなかった国や地域の出身者の区民が増えることも予想されます。

多文化共生事業の重要性は、これから更に増していくことでしょう。

そこで、日本の文化を児童・生徒に正しく教えるために、教科書の内容を補強する意味で、英語における日本人の正しい人名表記に関する補助教材を墨田区で作成して配布してはいかがでしょうか。

教育長のご所見を伺います。

 

以上で、私の一般質問を終わります。

ご静聴、誠にありがとうございました。

 

(区長答弁)
1 治安・防犯のための孤独・孤立対策について
(1)孤独・孤立に対するセーフティネットの構築について
本区の一世帯あたりの人員は、世帯規模の縮小が進み、令和2年は、1.87人となっており、これは、核家族化や若年単身世帯の流入出生率の低下、高齢者の単身世帯の増加などが要因であると考えられます。
加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により、家庭や地域で人々が関わり合い、支え合う機会や、交流・見守りの機会が減少しており、孤独・孤立の課題が顕在化・深刻化していると認識しています。
ご指摘の通り、治安・防犯といった観点からも、社会全体で対応しなければならない課題であり、当事者や家族等の立場に立ち、人と人との「つながり」を実感できる施策の推進が求められています。
区では、福祉分野において、包括的支援体制整備事業を推進し、今日的な課題に、横断的・重層的に対応するセーフティネットの強化などを図り、孤独・孤立化しないための「すみだ型共生社会」の実現に向けた取組を進めています。
今後も、福祉・保健・子育て・教育など各所管が連携するとともに、コミュニティを育む場・機会を増やしながら、住民同士が支え合う地域づくりを推進し、孤独・孤立への課題に対応したすみだらしい誰一人取り残さない包摂的な社会の実現を目指していきます。
 
(教育長答弁)
1 治安・防犯のための孤独・孤立対策について
(2)孤独・孤立を防ぐ学校教育について
第1は、児童・生徒が、健全な人間関係を築ける教育を行うための、学校現場への働き掛けについてです。
現在、子どもたちに知・徳・体のバランスのとれた教育を行っていますが、児童・生徒が、日々の生活の中で良好な人間関係を築く力を育むことは、大変重要なことと考えます。
道徳の時間をはじめ、学校の教育活動全体を通じて、良好な人間関係を築く基礎となる、思いやりの心で人と接する態度や、個性や立場を尊重し、多様性を受け入れる心情を育んでいけるよう、指導していきます。
また、グループ学習において、協働的な活動や、学校行事などの体験活動の中で、多くの人と関わり、より良く生きる力を培っていけるように指導し、将来、孤独・孤立につながらないよう、指導の充実に努めていきます。
2 英語教育における日本人の名前表記について
第2は、英語教育における、日本人の名前表記についてです。
英字の書物や英会話において、日本人の氏名を、ローマ字表記する際は、「氏-名」の順での表記が望ましく、その文化的意義をとらえ、日本の文化と他国の文化について、共に尊重する態度を育てるうえでも、大切なことと考えます。
平成12年、国語審議会答申の「国際社会に対応する日本語の在り方」では、人類のもつ言語や、文化の多様性を意識し、生かしていくという立場から、一般的には、各々の人名固有の形式が生きる形で記述することが望ましいとされています。
今後、ローマ字表記では、日本人の氏名は「氏-名」の順で表記すること等の補助教材を作成し、研修会や授業で活用していきます。

(2022年2月21日)

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